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研医会図書館は近現代の眼科医書と東洋医学の古医書を所蔵する図書館です。

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今回は 眼科諸流派の秘伝書 (24)

33.『高山司慶流眼科書』です。

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33. 高山司慶流眼科書


 秘伝書によってはその相伝者を辿ることによってその秘伝書のもとを知ることができる。本書は田原流眼科(須恵の眼科)の秘伝書の一つとして挙げられているものであるが、その巻頭に記された相伝者と思われる名前には九州筑前国末邑 高田七兵衛伝授書 真田了二、高
場順清、田原養伯とあり、そもそもの伝授者は筑前国末邑(現在の福岡県粕屋郡須恵町上須恵)の高田七兵衛と考えられる。そしてそれは真田―高場―田原の順に相伝
されたものと思われる。

 高田七兵衛の興したといわれる高田流眼科が何時頃創められたか明らかでないが、その流れをくむ並河一敬限科書に正保3年(1646)のものがある(小川剣三郎)と識されているところから高田流眼科の興りはそれ以前のことと考えられる。また、この高田流から出たといわれる田原流も田原構吉が眼科を創めたのが寛文年間(1661〜1672)といわれ、幕末文政より天保年間には尾張の馬島流、諏訪の竹内流、江戸の土生流と並んで当時わが国の四大眼科の一つとして世に田原流の名が知られていたといわれる。

 このように田原流眼科は高田七兵衛の創めた高田流眼科の流れを汲む眼科で、その子孫はその伝統をよく守り今日に至るまで代々引継がれ、馬島流眼科に次いでわが国で屈指の眼科家系の一つであるといわれている(筑前の田原眼科の詳細については宇山安夫著「わが銀海のパイオニア」を参照されたい)。筆者の手許にある江戸時代における田原流眼科を伝える眼科秘伝書、浜松、内田貞氏旧蔵の『高山司慶流眼科書』(高田あるいは高畠とする書あり)によってその眼科の一端を窺ってみよう。

 本書はおよそ30葉全1冊(23×16.5cm)、薄葉和紙に片仮名交り和文にて記述され、巻上中下よりなっている。内容項目の主なものを列挙すると次の通りである。

巻上 目ノ見分
1.五臓ノ見様  2.内障  3.中障  4.外障 5.ヨキ目ノ事  6.膿薬ノ指様ノ事   7.ヨハミノ薬ノ事  8.ツヨミノ薬ノ事  9.ヲサエノ薬ノ事  10.スミ薬ノ事 11.牧薬ノ事  12.ツリマケノ事  13.クサマケノ事  14.ハエマケノ事  15.血目気ノ事 16.ウチ目ノ事  17.シノツキ目ノ事 18.月之輪ノ  19.星クゾレノ事  20.星ノ事  21.眼珠出タル事 22.出目ノ事  23.シヅミタル目ノ事 24.ツキ目ノ事 25.○目ノ事
26.ウヅキ目ノ事  27.鳥眼ノ事  28.土肉ノ事  29.ヤミ目ノ事  30.爛眼ノ事  31.目ヒラキ兼ル事  32.目ヲ突ワタ出ル事  33.目ウヅク事 34.潤多ク出ル事  35.イモラウ出ル事  36.目ニソキ立タル事  37.痘疹目ニ入タル事 38.星ノキ兼ル事  39.蒸薬ノ事  40.洗薬ノ事。

巻中
1.薬註ノ事  2.内障  3.中障  4.ウゾキ止ル薬  5.ヲサエ薬  6.スミ薬  7.外障  8.掛薬 9.ツリ目気ノ事  10.草目気ノ事  11.ハエイ目気ノ事  12.血目気(血目) 13.庁目ノ事  14.シノツキノ事  15.日ノ輪ノ事  16.星ノ事  17.星崩ノ事 18.眼珠出タル薬  19.出目入ル薬サシ様   20.況ミ目指薬 21.突目ノ薬并疵目  22.土肉ノ薬  23.鳥目ノ薬  24.ヤミ目ノ薬  25.爛目ノ薬 26.目腫塞テ開キ兼ル時ノ薬  27.ツキ目黒眼ヨリワタ出タル時ノ薬  28.潤出ルフ止ル薬 29.イモライノ薬  30.疱療麻疹目ニ入タル時ノ薬  31.目ニソキノ立タル時ノ薬  32.星ノキ兼ル時ノ薬  33.萬目ニ惣薬。

巻下
1.内薬  2.外障内薬  3.懐妊ノ時目煩、赤ミ多シニ用ル薬  4.一切ノマケ、血道、シノツキ、出物、赤キヲ治ス薬  5.ヌケ出、ウヅクフ治ス薬  6.ウケ目ヲ治ス薬  7.突目、折目、ウヅクニ吉イ薬  8.カニノ目ノ如ク成ヲ治ス薬  9.目療出、ウヅキ、泊多出ルニ吉イ薬  10.ウミ薬、スミ薬指ス前二用ル薬  11.腫痛、腹中目ウゾキ出ルニ吉イ薬 12.風ニアタリ腫瞳シノツキ有痛二用ル薬  13.風ニアタリ腫潤出目不明ノ薬 14.小児癖気ニテ目悪妙薬  15.痘療麻疹目ニ入ルニ吉熱寒二惣薬  16.目ノ萬病ヲ治ス薬  17.惣薬中焦下焦血目ノ薬  18.ウムシ薬  19.洗薬。

眼医秘伝書
薬調合之次第

 以上の項目に示されているように本書は上巻に目の見分の事、中巻に龍脳を始めおよそ40味の主治薬性を述べ、下巻に各種眼病の薬物療法を述べたものであるが、眼医秘伝書の項に上障症、中障症、小児痘疹目ニ入ル?、風眼之?、星之事、癩瘡之眼、星崩、正明膏加減之?、五内障中障外障ニハ竜脳ヲ不入吉、水薬之法、高麝丹、仙油、竜丹膏ノ?等13ヶ条を当流奥伝秘術として掲げていることは注目されるところである。また、薬調合の次第の項に正明膏の処方(瀘眼石、寒水石、滑石、石膏、樟脳、光明朱、龍脳、麝香)を飯田道雲秘方として挙げ、「突目、ウツキ目、疵目、鳥目、メモライ、五臓六腑の疼目72種、其外6種共ニコノ正明膏ニテ治セズト云ウ事ナシ」と、その当流きっての妙薬なることを強調している。

 江戸時代の田原流眼科の秘伝書として伝えられるものの中には『田原家極秘書眼療秘録』(写本、 5冊)、『眼療伝家方』並河一敬筆(写本、 1冊)、『筑前須恵田原家一子相伝眼科秘書』(嘉永元年写、 1冊)等がある。



 

 

(1983年 12月 中泉、中泉、齋藤)

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