漢方科 岡田研吉医師のコラム


 鴉胆子の外用による疣贅(いぼ)や魚の目の治療

 

  35年前の北京中医学院に留学中に、私の人差し指に水疱ができた。潰してほっておいたら5mm大の疣贅ができてしまった。 それを見た内科の憑先生が、ニコニコ笑いながら鴉胆子(あたんし)を潰して塗りつけてくれた。半信半疑で翌朝目覚めると、見事に筋状に溶けて来ていたので、挟んで抜き去るとぽっこり穴が開いていた。 次の日には傷口も収まって、うっすらと筋が残るだけであった。狐につままれた様な、不思議な経験であった。

  その後帰国して漢方医院を開業して以来、鴉胆子の「疣」や「魚の目」の治療を数十例施行したが、全例で成功している。

  鴉胆子の外用療法は、中医学というよりは、それ以前の草医達の民間療法として、はるか昔から行われていた。

「腫瘍細胞(疣)だけを溶かして、正常な組織には影響を与えない」と言う、特異な藥効を有する鴉胆子は、現在では皮膚癌への治療が研究されている。

  鴉胆子は、粘膜刺激性が有るので、眼瞼や髭剃り痕には接触しないように注意してください。
  尖圭コンジロ-ムの場合は、粘膜面以外に塗布してください。

 

その後: 胡希恕老中医の弟子の馮世綸先生は、現在『伊尹湯液経』 『中国湯液経方』等の本を出版され、ご活躍されている。

   

 


症例1,少年10歳:140cm-34kg 


2015年8月28日: 初診
既往歴: 特になし。
現病歴: 両足底に多発する疣贅で、皮膚科に二年間通院し、液体窒素で加療するも、改善傾向を示さないので、当院を受診した。

治療: 鴉胆子(あたんし)を磨り潰してして疣贅に塗り、絆創膏で密封した。
   翌日の朝に、石鹸で洗い落とすように指示した。
   
生活上の注意:
1. 剣道部なので、”すり足”が疣贅の発症や治療の妨げの誘因と推定して、しばらく体育を休んでもらった。

 
   

9月2日: 表層から剥落し始めた。
同様の処置。
忙しいときは、エキス剤で、荊芥連翹湯5g  2×~終診まで継続。
時間のあるときは煎薬で、乾癬や汗疹の通用処方を処方した。

   

9月10日:同様の処置

9月19日:同様の処置

9月26日:同様の処置

9月30日:同様の処置

10月3日:同様の処置

10月7日:同様の処置

10月10日:同様の処置

10月31日:同様の処置

 

 

 

11月14日:
疣贅が消失したので、治療を終了した。
なお、荊芥連翹湯エキス剤は継続的に内服していたが、煎じ薬は、苦いのであまり飲めなかった様子。

 
 

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