研医会通信  244 号 

 2025.9.17

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研医会図書館は近現代の眼科医書と医学関連の古い書物を所蔵する図書館です。
この研医会通信では、当館所蔵の資料をご紹介いたします。

今回は 中尾万三『食療本草の考察』です。

 

                図1『食療本草の考察』 中尾万三

 

『食療本草の考察』(上海自然科学研究所彙報 第一巻 第三号)1930年2月

    中尾万三 編

 

 筆者が中学生の頃、世の中は日中友好の機運が盛り上がり、NHKは「シルクロード」の特集を始めていました。日本の正倉院の宝物にも通じる西方伝来の文様や仏像の美しさに、多くの人が惹かれていきました。今考えると、あの頃が世界は全体に人々が寛容で、さまざまな文化と触れ合うことが楽しみである、最高の地点だったようにも思えます。

「シルクロード」好きの筆者は「敦煌」と聞くとすぐに手に取ってしまうのですが、今月の中尾万三先生の本は、その敦煌で発見された『食療本草』について考察された報告書です。昭和4年の序文には、第一編として敦煌石室発見食療本草残巻考、第二編として、食療本草遺文をなぜ取り上げたか、ということが詳しく書かれています。『食療本草』の編者である孟詵(621—712)が90過ぎまで生きたことから、「其書が極めて信ずる所により書かれたる事を想う可し」と、この書物を研究する意義を述べています。孟詵が師である孫思邈(581—682)の説を必ずしも踏襲せずに、また当時伝えられていた食経に準拠せずに、新たに補養の処方を編纂したということも記しており、千金食治方などと並べて読んでみることも面白いかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

      図2 『食療本草の考察中尾』目次と扉 

 

   図3 同本 序文

 

   図4 同本 「校合食療本草遺文」のページ